昨日、OECDが3年に1度実施しているPISA2025の結果が公表されました。その報告書より「数学的リテラシー」の結果を、私なりに読み解いてみたいと思います。
PISA調査ですが、2000年から国際調査として実施されてきており、これまでも結果公表時には話題となってきました。まずはPISA調査の特徴ですが、次のようになります。
1)調査問題は、基本的には同一にしており、経年変化を比較しやすいようにしている。そのため、一部の問題を除いては、非公開である。
2)点数のつけ方では、中心分野として実施した最初の年(数学的リテラシーは2003年調査)の「OECD加盟国の平均点」を基準値(500点)としており、異なる実施年の結果が比較できるよう調整し、各国・各年の平均得点を算出している。
3)調査問題を基本的には同一にしてきているために、20数年前の調査問題を踏襲しており、現代的学力観との間にギャップが生じる可能性がある。
これらを踏まえPISA調査の特性を活かして分析するとするならば、
A)順位ではなく点数における経年変化を詳しく分析すること、
B)自国の経年変化と他国の経年変化を比較しその傾向を読み取ること
となるかと思います。
今回、公開されている調査結果から、「数学的リテラシー」に関して、いくつかのデータを私の方でピックアップして、添付の表にしてみました。表は2003年からスタートしています(実際には2000年から調査実施)。
「参加国・地域総数」ですが、こちらはOECD加盟に関係なく、また国ではなく地域も含まれます。40から91と倍以上になっています。
「OECD内参加国数」ですが、これは上の分からOECD加盟国数をピックアップしたものです。29カ国から38カ国に増加しています。
「OECD内日本順位」ですが、「OECD内参加国数」での順位で、この間は1位が続いています。その上には、加盟国でないシンガポール、マカオ、台湾、香港などがいます。
「日本得点」ですが、2003年を基準に調整されていますので、ほぼ単純に比較可能です。最高が536点、最低が523点です。今回は前回より少し下がっていますが、全体として日本は大きな変動はありません。
「OECD内平均点」ですが、2003年のOECD加盟国の平均を500点として、経年変化を示しています。全体的には若干下がりがちでしたが、2022年、2025年に大幅に下がりました。おそらく世界的なコロナ禍の影響かと思われます。
「OECD内(500点以上)国数」ですが、これは2003年のOECDの平均を500点としていますので、2003年はOECD加盟の29カ国中の17カ国になります。それが、経年でどう変化しているかということですが、2018年が16カ国に対して、2022年が4カ国、2025年が3カ国と激減しています。これは、2003年時点の平均点(500点)を保てる国が激減したという意味になります。
最後の「500点以上国数/参加国数」ですが、2003年で言えば17/29=59%ということになります。当然こちらも、2018年が44%に対して、2022年が11%、2025年が8%と激減しています。
だいぶ長くなりましたので、そろそろ結論に向かいたいと思います。
ア)日本は、調査開始時から点数の上下変動が少ない傾向にあり、それが今回も続いていること
イ)多数のOECD加盟の国が、コロナ禍を境に大きく点数を下げたこと
ウ)その傾向は、2025年調査でさらに顕著(継続)になったこと(例として、オランダ:2018年519点、2022年493点、2025年483点、フィンランド:2018年507点、2022年484点、2025年469点)
エ)一方で、日本のようにコンスタントに点数をキープしている国が少数ではあるが見られること(例として、韓国、エストニア、スイス)
他の方が、男子と女子の点数比較や、学力層別の比較、情意面との比較をされていますので、それらについては他の方の分析をご覧ください。

投稿者プロフィール

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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。
コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。
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