不登校の子どもたちを含め、今後、様々なニーズを必要とする子どもたちは増加することが予想されます。その点を見越した教員養成を、理念と具体の両輪で考案し、カリキュラム構築・実践・検証を行っていく必要があります。

 私は、これまでの教員養成において大切にしてきたことに加えて、差し当たっては、下記の3点の養成が急務ではないかと考えています。

 1)複線型授業設計力:対面式一斉授業における単線型授業設計(もちろん、個別対応は内包)から、学級の実態に応じて「対面と非対面、同期と非同期、一斉と個別」を見越した複線型授業設計力の養成。

 2)ICT活用力:複線型授業を実現するため、ICT活用による授業配信技術力、自作・外部作を組み合わせたICT教材活用力、ICT活用に耐え得る正確で明朗な日本語発話力の養成。

 3)児童生徒共感力:教員自身が経験したことの無い複雑な子どもの状況を正しく理解する力、そのことによる各種困難を想像する力、そのうえで児童生徒に共感する力の養成。

 この間、中央教育審議会でも活発に議論されており、様々な子どもへの適切な学習支援に向けて、教員養成を改善し・実践していきたいと思います。

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。

コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。