教員退職者数の推移において大幅な上下変動が予想されていますが、教員採用予定者数は、なだらかな減少が予想されています。少し詳細を見ておきます。まず、採用者総数ですが、退職者数の上下変動に伴い、採用者数を上下させてしまうと、教員の年齢構成において歪な状況が生じてしまうことから、それは避けるようにしていると考えられます。次に、中学校の採用者数予想ですが、2026年度(令和8年度)から3年間増加しています。これは、中学校での40人学級から35人学級への1クラスの生徒数減少に伴う、総クラス数増加への対応と考えられます。これが、2026年度(令和8年度)は1年生で実施、翌年度は2年生まで実施、翌々年度は3年生まで実施と年次進行しますので、3年間の増加になっています。

 全体の傾向に戻ります。このグラフ内でのピークは、2026年度(令和8年度)の36,545人となり、最も少ないのは新カリキュラムの卒業生が教員になる2032年度(令和14年度)の25,583人となり、6年間で約70%に減少します。小学校が16,397人から11,531人と約70%、中学校が11,265人から7,167人と約64%、高等学校が5,402人から3,896人と約72%という計算です。

さて、ここで検討すべきことは、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する論点整理【概要】(令和7年10月15日)」に示された、「〇いわゆる「教師不⾜」の背景にある教師の年齢構成に起因する⼤量退職とそれに伴う⼤量採⽤の時期が過ぎれば、⾃ずと解決する課題ではない。」という指摘です。

この指摘の持つ意味は、「教員を目指す学生の裾野(人数)をもっと広げないといけない」「そのためには、教員免許状に必要とされる科目数・単位数を精選する」「精選した分を各大学独自の(これまでの)科目をそれに充てることで対応することも可能である」というメッセージの側面も感じられます。

 未来のことは本当にわかりませんし、こちらの予測には全くなかったような副反応が生じることもあります。ですので、私も正直なところ「わからない」という気持ちが強いのですが、これまで見てきた教員退職者の定年延長と教員採用予定者数の減少を考えた上で、うまく調整がなされていってほしいと願っています。

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。

コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。