分数の議論のおまけとして、最後に「度と率」について書いておきたいと思います。いずれも、商としての分数のわり算によって導き出される数ですが、意味はかなり異なります。
 まず、度ですが、これには速度(速さ)や密度があります。速度=距離÷時間で求めますが、距離と時間は単位が異なるので、速度には時速(km/h)といった明確な大きさが定まります。これは密度も同じです。
 一方、率ですが、これには割合があります。「50人中、20人の割合は?」では、20/50=2/5=0.4となり、4割とか40%となります。ここでは、人を人で割っているので、割合では単位が相殺されて単位無しとなります。
 このように、同じわり算で求める数であっても、度には単位があり、率には単位がありません。これが、小学校5年生の算数の内容に含まれているのですから、いかにこれらの概念の正確な理解が難しいことであるのかが、わかっていただけるかと思います。
 私たちは、分数の理解で立ち止まっている子どもたちの言葉に耳を傾け、そこから分数指導の方法を改めて考えていくことが必要であると感じています。

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。

コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。