小学校2年生の分数では、分割分数と操作分数での導入のため、絶対的な大きさをもつものではないことを紹介しました。
 一方で、3年生になると、状況は一変します。分数に絶対的な大きさを持たせるために、量分数が扱われます。量分数とは、1/2mや1/3dLといった量を伴う分数です。このように量分数を導入することで、同一の単位間では、大小の比較が可能となります。すなわち、1/2m>1/3mといった具合です。
 並行して、単位分数の考えを活用して、数直線上への分数の配置が試みられます。具体的には、「3/4は1/4を3個集めた数です」「5/5は1のことです」などが扱われます。
 このように各分数の絶対的な大きさと、数直線上の位置をしっかりと押さえた上で、いよいよ同分母分数の加減が、1/5dL+2/5dL=3/5dLといった形で導入されます。
 そして、この流れは4年生になっても続きます。分数の数としての大きさの拡張がなされ、真分数、仮分数(分子が分母と同じか大きい分数)、帯分数(2と1/3などの分数)などが定義づけられます。また、仮分数や帯分数への拡張に伴い、2/5+4/5dL=6/5=1と1/5なども扱われます。
 まとめると、3,4年生での分数の扱いは、量の考えをもとに数直線上の絶対的な位置の決定と、分数間の大小比較を可能にするとともに、たし算、ひき算の計算が導入されるようになるということです。これを分数の「分析的見方」としておきます。
 ただし、4年生では、もう一つ分数の重要な性質を扱います。それは、1/2=2/4=3/6といった表記の異なる同じ大きさの分数という概念です。これが5年生以降の分数の新たな概念導入の試金石になっていきます。
 続きはまた後日に頑張ります!

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。

コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。