続きを書くのが遅くなってしまいました。前回の分数の「表記上」の問題については、確かに問題ではありますが、分数のルールを教えたら、まあ何とかクリアするだろうというレベルでした。一方で、分数の「概念上」の難しさについては、本当に難しい課題が横たわっています。
 ここで、少し小学校での分数の指導の系統を見てみます。
 まず2年生で分割分数の内の単位分数を取り上げます。分割分数とは、あるものを等分割した内の何個分という考えによる分数で、その中の単位分数は、分母が1の場合ものものです。ピザであれば、2等分した1つ分を1/2、3等分した1つ分を1/3とするわけです。ここでは、どちらが大きいかという問いは意味をなしません。ピザSサイズ1/2とピザLサイズ1/3では、1/3の方が大きい場合が存在するからです。
 また、分割分数と同時に、操作分数的な問題「8個のおかしの1/2や、15個のおかしの1/3は何個ですか」といった問題が登場します。これは、3年生のわり算へのつながりをも意識したものでもあります。操作分数とは、「○をa等分したb個分」ということで、分割分数と同文脈ではありますが、○の中に、具体的な数値が入るために、難度はかなり上がるようにも思います。
 なお、両方の扱いにおいて共通することは、これらの分数には具体的な大きさが決まっていませんので、大小比較不能であるということです。具体的には、8個のおかしの1/2は4個、15個のおかしの1/3は5個で、大小逆転が生じたりします。
 すなわち、算数科の分数の扱いは、大小比較不能な状態で導入がなされるということです。これを分数の「総合的見方」としておきます。続きはまた後日に頑張ります!

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。

コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。