図は、文部科学省のデータをもとに、不登校児童生徒数のグラフに、長期欠席児童生徒数(病気、経済的理由、その他を含む)を上乗せしたグラフです(自作しました)。すなわち、青色棒部分は昨日のデータと同じ不登校数で、そこに赤色棒で「病気、経済的理由、その他」の数を加えたということです。
この図をもとに、昨日示した「2)都道府県の小・中学生を合計した不登校のデータが示されているが、これが果たして全国の学校現場の実態を反映したものになっているかどうかということ。」について検討していきたいと思います。
結論から書きますと、私はかなり反映できていないと考えています。理由は、不登校のカテゴリーに入らない「病気、経済的理由、その他」の理由の欠席児童生徒数が非常に多く、それらが、各都道府県の不登校数と対応関係をなしていないからです。
データを具体的に見ていきたいと思います。長期欠席児童生徒数の、全国平均が53.0人(37.2+15.8)で、多い順に、沖縄県(72.7)、奈良県(64.4)、茨城県(63.6)、宮城県(62.6)、福岡県(59.8)です。奈良県、茨城県が新たに登場しました。逆に少ない順に、岩手県(37.2)、福井県(39.0)、山形県(39.5)、宮﨑県(40.0)、徳島県(41.3)です。山形県、徳島県が新たに登場しました。最も多い沖縄県(72.7)と最も少ない福井県(39.0)とでは1.86倍もの差があります。
次に、「病気、経済的理由、その他」の理由での欠席数(赤色棒)の上位を見ますと、多い順に、岡山県(27.7)、奈良県(27.2)、沖縄県(26.2)、茨城県(26.1)、高知県(23.5)です。ここに重要なポイントがあります。岡山県は、中国地方では不登校数で最も少ないのですが、長期欠席数では最も多くなります。奈良県も近畿地方で、茨城県も関東地方で、高知県も四国地方で、不登校数はそれほどでもないのですが、長期欠席数では最も多くなります。
下位も見ておきます。少ない順に、島根県(4.8)、新潟県(4.9)、徳島県(6.5)、和歌山県(6.9)、石川県(7.2)です。最も多い岡山県(27.7)と最も少ない島根県(4.8)とでは5.77倍もの差があり、この違いはデータの妥当性を含めて、しっかりと議論しなくてはならない事項であると考えています。
2)についてのまとめですが、長期欠席児童生徒数で見ると、さらに都道府県格差が広がっており、これからは、このデータをもとに分析を行う必要があると考えます。また、都道府県によって、「病気、その他」での欠席の取り扱いが、通常の感覚をはるかに超えて異なりますので、十分に注意する必要があります。繰り返しになりますが、今後は、都道府県の基準が大きく異なる「不登校数」で議論・検討するのではなく、学校に来ていない児童生徒の総数である「長期欠席児童生徒数」で議論・検討していくべきであると考えます。

投稿者プロフィール

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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「生成AIを用いた算数・数学教育」。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。2008年には『ブタがいた教室』として映画化。
コロナ禍の中で、日本語及び多言語に対応した算数・数学動画教材約3,300本を制作・公開した取り組みにより、2022年第7回IMS Japan賞優秀賞受賞、2023年第3回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(教育の部)受賞、2023年日本民間放送連盟賞(特別表彰 青少年向け番組)最優秀賞受賞した。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「初等算数科教育法序論」(共立出版),「オリガミクスで算数・数学教育」(共立出版)などがある。
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