通常、学習指導案は、導入5分、展開30分、まとめ10分といった「時間配分」で書かれています。しかし、実際に研究授業を参観に行くと、その多くが、45分で終わらず、時間延長がなされてしまいます。私は、時間延長によって最も先に集中力が切れるのは誰かということが、とりわけ公立学校の場合には非常に気になります。集中力が切れやすいのは、間違いなく学力低位の子どもたちです。ですので、終了のチャイムが鳴ってから、先生が大きな声で、「ここが一番大事です。まとめましょう。」と言っても、その子どもたちの集中力は既に切れてしまっており、効果がありません。
そこで、学習指導案の指導の要所に、時刻を書くということを以前から推奨してきています。こうすることで、指導している先生は、時計を見れば、瞬時に自分の授業が計画通りであるのか、あるいは早いか遅いかが、一目でわかります。また、学習指導案作成時点で、それぞれの活動に何分くらいをかけるということのイメージができますので、ここはあまりゆったりしていると、後で困るので、さっさといこうといった目安が付きます。
もちろん、学習指導案の時刻通りにいかない様々な出来事が、授業では当然起こりますので、「筋書きにない授業」になることもあるでしょう。しかし、その際であっても、予め時刻を設定していると、残り時間はあと何分なので、この活動を今回は削除しようといったやりくりができるようになります。これが、時刻設定のない「時間における筋書きのない授業」であれば、臨機応変の対応もできにくいですので、ぜひ、学習指導案には時刻を書いてはどうでしょうか。
写真①、②:京都府長岡京市教育委員会指定研究発表会 長法寺小学校6年生 算数科学習指導案
投稿者プロフィール
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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。
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