これまでのデータに離職教員数データを合わせると、およそのシミュレーションが完成します。添付のグラフは、文部科学省「令和元年度学校教員統計調査(確定値)の公表について(2021年3月25日)」による、平成30年度間までの3年ごとの公立小学校の離職の理由別離職教員数です。
今回は、最新データが出ていましたので、少し付け加えて特徴を分析したいと思います(文部科学省総合教育政策局調査企画課「学校種別 採用・転入・離職教員数」令和4年度(中間報告)より)。令和3年度間(2021.4.1~2022.3.31)の離職教員は、計14,973人(平成30年度間計16,619人)で、その内の「定年(勧奨含む)のため」は7,957人(53.1%)、「定年以外」は7,016人(46.9%)です。平成30年度間と比較すると、定年(勧奨を含む)のための割合が8.5ポイントも減少し、その分、定年以外の割合が増加しています。
では、定年以外の割合のいずれの理由が増加したのでしょうか。各年度間におけるそれぞれの項目の割合(%)で比較してみます。令和3年度間の「病気のため」は757人(5.1%)で、平成30年度間の661人(4.0%)と比較すると、1.1ポイントの増加です。「うち精神疾患」は571人(3.8%)と457人(2.7%)で、1.1ポイントの増加です。「転職のため」は2,083人(13.9%)と1715人(10.3%)で、3.6ポイントの増加です。「家庭の事情のため」は1,882人(12.6%)と1,633人(9.8%)で、2.8ポイントの増加です。割合で見ますと、転職、家庭の事情、病気のためにと続きます。
これらの離職の状況をどう捉えるのかについては、なかなか難しいところです。「転職」は、教員という職業の魅力の低下、労働条件の厳しさ、他の職業の相対的な魅力などが考えられます。また「家庭の事情」は、育児・介護の負担などが考えられますが、加えて、離職の理由にしやすいという側面も考えられます。病気のため(精神疾患含む)の割合が増加しているのは、気になるところです。
令和3年度間の離職の状況だけで即断することはできませんが、今後も同様の学校を取り巻く環境が続けば、定年以外の離職の割合は増加していくと予想されます。教員の働く環境の改善は喫緊の課題であると思います。(終了)
投稿者プロフィール
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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。
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