今回の問題を説明しながら、速さの指導の要点について接近していきたいと思います。
 【問題】ウサギと亀が50m競走を行ったところ、ウサギが25mルの差をつけて勝利しました。では次のレースで、ウサギは25m後ろからスタートした場合、競争の結果はどうなるでしょう。ただしウサギと亀は、それぞれ一定のスピードで走るとします。
 【答え】A:ウサギが勝つ
 【解説】最初の競争でウサギが50m走ってゴールした時に亀は25mの地点。そして、次にウサギが25m後ろからスタートした時、ウサギが50m走ったタイミングで亀は25m地点。ここで両者が並びます。ウサギの方が走りが速いので、先にゴールするのはウサギだということがわかります。
 こうした問題は、旅人算といわれるもので、動くものが2つあって、両者の間隔の変化について考えるというものです。旅人算には、両者が出会う「出会い算」と、片方が片方に追いつく「追いつき算」があり、今回の問題は「追いつき算」です。教科書では、応用問題として出ているものが多いと思います。解き方は、1分後に双方がどれだけ進んだか、2分後には?といった形で表を作成し、追いつく時間を求めていきます。実は今回の問題では、分速や秒速が示されていませんので、少し難しいのですが、ポイントは同一の時間で進む道のりが示されていることです。つまり、同じ時間で50mと25m進むと示されているので、ここを拠り所に解答に接近していきます。これにより、スタート地点から25mのところで、ウサギと亀が並ぶことがわかるわけです。
 なお、その後はウサギが速いことは自明なので、ウサギが勝つという解答になるのですが、ここで、もう一つの問題を作成することができます。では、ウサギがゴールした時、亀はどの地点にいますか?という問題です。この問題は、25m地点で並んだ時から、あと25mの道のりで、どの程度の差がつくかということですが、これは比の関係を用いて50m:25m=25m:12.5mで求めることができます。したがって、ウサギが残りの25mを進む間に亀は12.5m進むので、亀の地点は、25+12.5=37.5 答え37.5mとなります。
 速さ指導のポイントとして、このように区間を様々に変化させて、どのように進むのかという特徴を考えさせる点があげられます。
 次回は、平均の速さと瞬間の速さについて解説します。

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。