先生方と話をすると、「今回授業で取り上げる学習内容を学ぶ必然性を、最初に子どもにしっかりと理解して授業に向かってほしいんです」と言われることがあります。なるほど、学ぶことの必然性を最初に理解すれば、学びへの意欲や態度も変わってくるように思います。
そして、実際の授業では、先生は授業の前半のかなりの時間を使って、子どもたちと学ぶことの必然性について、議論での空中戦を行います。しかし、この空中戦についてくることのできる子どもは、一部のよくできる子である場合が少なくありません。厳しい言い方をすれば、その子どもたちは、既に本時で扱う学習内容を、別の場所で学習している可能性もあります。
学ぶことの必然性を理解してから学ぶということを否定するつもりはありませんし、必然性を先に理解すれば学習効果が高まるとも思います。ただし、学んでもいないのにその必然性を理解することは、それほど容易ではないということも、先生はしっかりと理解しておく必要があると思います。実際、大人であっても、学習した内容が自分のものになってこそ、「あっ、この内容はあの場面で使えるな。」と思えることが少なくありません。
大切なことは、子どもが学習し、体得したあとに、「この内容って日常生活のこの場面の見方に活かせる」や「今まで、やみくもに遊んでたけどこの考えを使ったらもっと戦略的に遊べる」といったようになることだと思います。
とすれば、授業の前半の必然性の話は最小限にして、授業の後半に、学んだことの活かし方をじっくりと考えたり試行錯誤したりする時間を確保する授業にしていくことが大切だと感じます。
投稿者プロフィール
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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。
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