教員に対する社会のネガティブなイメージや、教員定年延長制度による教員数の増加など、教員採用については、各自治体とも苦労しているところです。そこで、①~⑦の質問項目について調査し、分析しました。
実施対象 近畿二府四県の府県市町村教育委員会(202件)
実施方法 郵送によるアンケート調査(5件法回答、及び各調査項目での自由記述)
それぞれの項目に対して、「5.重視する、4.やや重視する、3.どちらともいえない、2.あまり重視しない、1.重視しない」の5件法で回答を求めています
①近年の教員採用試験の低倍率傾向について打開策を講じる
②定年延長制に伴い採用人数を抑制する
③中学校部活動等の外部委託を促進する
④小学校教科担任制に対応した教員の優先的な採用を行う
⑤ICT活用に対応した教員の優先的な採用を行う
⑥働き方改革を促進し,教員に対するイメージの低下を防ぐ
⑦実践力のある教員を採用するための採用試験の工夫を行う
回収数(率) 92件(約46%)
結果より、「⑥働き方改革の促進」が、最重要視すべき事項として挙がってきます。これは、前述した教員に対するネガティブなイメージを何としてでも払拭しないと、絶対に改善しないという強い意識が見て取れます。ここを克服することで、「⑦実践力のある教員の採用」,「①採用試験低倍率克服」につなげていきたいと考えているようです。
「③部活動の外部委託」についても,教員の働き方改革に連動する形で重視する傾向にあります。この部活動については、これまで中学校で教員をされてきた先生方からは、外部委託に対して賛否が分かれるところではありますが、長い目で見れば、外部委託の方向に進んでいくように思われます。
一方、「④小学校教科担任制対応」や「⑤ICT活用対応」に長けた教員の採用に対しては、それなりに重視はしていますが、どちらともいえないもかなり多い傾向にあります。ただ、一部の教育委員会では、教科担任制に該当する中学校の教科の教員免許状取得予定の受験生に対しては、専用の教員採用枠を設けるところもあり、これからの議論になりそうです。
また、これらの質問項目の中で、「重視する、やや重視する」が最も少なく、「あまり重視しない、重視しない」が最も多かったのが、「②教員の定年延長に伴う採用抑制」でした。まだ、定年延長制度が実際にはスタートしていませんので、このあたりは願望も含まれているように感じました。
投稿者プロフィール
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大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。
小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。
著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。
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