小学校での大きな無限と小さな無限を考えるとき、いつも望遠鏡と顕微鏡の発明を思い出します。19世紀には望遠鏡技術の向上により天文学が飛躍的に発展しました。宇宙の様々な現象に対する根拠が、宇宙空間に飛び出さずとも少しずつ解明されていった時代と言えます。一方、20世紀には顕微鏡技術の向上により、医学や生物学が飛躍的に発展しました。肉眼では見えない世界には、様々なルールや特性があることが解明されていった時代と言えます。
 そのように考えると、2世紀以上にわたって人類が辿ってきた道を、子どもたちは、わずか数年で獲得するのですから、立ち止まりや混乱があることは当たり前のことだと思います。むしろ、立ち止まりこそが重要なのであって、その子どもの持つ疑問に寄り添い、互いに考えを進めていく姿勢が、先生に求められているのだと感じます。(終了)

投稿者プロフィール

黒田恭史
黒田恭史
大阪教育大学卒業,大阪教育大学大学院修士課程修了,大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。
大阪府内の公立小学校勤務8年の後,佛教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,現在,京都教育大学教育学部教授。
京都教育大学では,小学校教員養成,中・高等学校(数学)教員養成に従事。近年の研究テーマは「数学教育と脳科学」の学際的研究。

小学校勤務時代,クラスで豚を飼うといった取り組みを3年間実践。フジテレビ「今夜は好奇心」にて1993年7月放映。第17回動物愛護映画コンクール「内閣総理大臣賞」受賞,第31回ギャラクシー賞テレビ部門「ギャラクシー奨励賞」受賞。

著書に,「豚のPちゃんと32人の小学生」(ミネルヴァ書房),「脳科学の算数・数学教育への応用」(ミネルヴァ書房),編著に「数学科教育法入門」(共立出版)などがある。